お気に入りの水彩画家 

中世から近世にかけて活躍した、魅力あふれる水彩画家たちをご紹介しています。

彼らの作品には、水彩の持つ本質的な美しさや、時代を超えて心に響く力が

宿っているように感じます。このページでは、僕自身が20~30代の頃、美術館や

ギャラリーで触れた驚きや感動も交えながら、彼らへの深い尊敬とともに

その魅力をお伝えします。一緒に水彩画の原点をたどりながら、新たな発見を

楽しんでいただけたら嬉しいです。


  ウィリアム・ターナー

 旧ウェルシュ橋、シュロップシャー州シュルーズベリー

 

 

            「スカボローの街と城 (朝)」

 

 

ウィリアム・ターナー(1775~1851)はイギリスの風景画家です。油彩画で有名ですが、水彩画も迫力があり、それでいてとても繊細で上品な作風が、鑑賞者を特別な世界へと誘ってくれます。
僕が初めてターナーの作品に出会ったのは、ロンドンに

あるテートギャラリーを訪れた1984年の春でした。

白壁の美しいギャラリーに、深い色をした宝石のような

油彩画と水彩画が数十点陳列されていました。

もう40年も前の事なのに、あの時の感動は忘れることが

出来ません。

光と色彩の魔術師

ターナーの水彩画は、光と色彩を巧みに操ることで 自然の劇的な変化や雰囲気を描き出しています。特に彼の作品では、朝焼けや夕暮れ、霧や嵐といった一瞬の自然現象を描写する能力が卓越しています。水彩特有の透明感を活かし、光が大気や水面に反射する様子を詩的に表現しています。

感情豊かな風景描写

ターナーは風景画を通じて自然の雄大さや人間の儚さを表現しました。彼の水彩画には、穏やかな田園風景から、嵐や荒れ狂う海といったドラマチックな情景まで、幅広い感情が込められています。単なる風景描写を超え、見る者の心を動かす力があるのが特徴です。

速筆と即興的な技法

ターナーの水彩画の多くは、現地で素早くスケッチされたものや即興的な表現が特徴です。そのため、筆使いや構図が非常に自由でありながら、緻密さを損なうことがありません。特に旅先で描かれたスケッチは、彼の観察力と表現力の高さを物語っています。

水彩技法の革新

彼は伝統的な水彩画の技法を革新し、グラデーションや重ね塗りなどを駆使して深みのある作品を生み出しました。さらに、鉛筆やインクと水彩を組み合わせることで、独自の質感とダイナミズムを生み出しました。

未来の印象派への影響

ターナーの水彩画の実験的な表現は、19世紀後半の印象派画家たちに大きな影響を与えました。特に、光や大気の移ろいを捉えた彼の作品は、クロード・モネやカミーユ・ピサロといった画家たちの先駆けとも言えます。

 

ターナーの水彩画の魅力は、その透明感と色彩の妙、そして感情に満ちた自然描写です。正に巨匠という名に相応しい作家だと思います。

                2025年1月5日

 



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