水彩コラム
水彩画にまつわるテーマを、いろいろな視点で掘り下げていきます。
水彩画を描くことには、心を癒し、日常のストレスをそっと和らげてくれる
不思議な力があります。そんな癒しの魅力とともに、時には
「どうして色が濁ってしまうの?」「風景をどう切り取れば素敵に描ける?」
といった疑問や悩みも出て来ます。それにも丁寧にお答えできればと思います。
透明水彩の特性を生かすコツや、「紙の白」を活かした作品づくりのヒント、
さらに「水に任せる」楽しさについても、少しずつお話しできたらと思っています。
あなたの筆が生み出す一枚一枚に、新たな発見と喜びが広がりますように。
初心者はどちらの紙を選ぶべき?
水彩紙を選ぶ順番、あなたならどうしますか?
1,コットン紙を初心者のうちから使う
2,木材パルプ紙を初心者のうちは使い、
慣れてきたらコットン紙に切り替える
答えは…1番です!
でも、2番を選びたくなる気持ちもわかります。
木材パルプ紙はコットン紙より安価なので、
「最初はお試し感覚で」と思うかもしれませんね。
失敗してもダメージが少なそうですし。
でも実は、初心者には木材パルプ紙のほうが難しいんです。
なぜなら、木材パルプ紙は重ね塗りが苦手。色を重ねるとムラができやすく、「あれ、なんか違う…」となりがち。初心者の方は淡い色を何度も重ねることが多いので、ムラ地獄にハマる可能性が高いんです。
その点、コットン紙は重ね塗りがしやすく、ムラが少なくて仕上がりがきれい。滲みやぼかしも美しく、水をたっぷり使っても波打ちが少ないので、安心して描けます。
でも「高価な紙を最初から使うのはちょっと…」という方には、こんな方法もおすすめです。
コットン紙と木材パルプ紙の両方を買って試してみる!
例えば、
・コットン紙は何度重ねてもきれいなのか?
・木材パルプ紙は本当にムラが出やすいのか?
実際に試してみると、紙ごとの特性がよくわかります。
木材パルプ紙は修正やリフティングがしやすく、独特の表情が出せるというメリットもあります。
一方、コットン紙は完成度の高い作品を目指すのにピッタリです。
最後にアドバイス!
「高価な紙を1冊、安価な紙を2冊」など、自分なりにバランスを取って使い分けると、無理なく
楽しめると思います。紙選びも水彩画の醍醐味のひとつ。じっくり試しながら、自分にぴったりの
紙を見つけてくださいね!
2025,1/14
水彩画を描くことの癒し効果について
私たちの日常は、考えることの連続です。仕事や家事、ニュースに予定表・・、頭をフル回転させることが求められ、いつの間にか心も体も疲れ果ててしまうことがあります。
それに気づくのは、たいてい疲労のピークを越えた後です。
そんなとき、アートが私たちの心をふっと軽くしてくれるのは、
考えることよりも「感じること」に重点を置けるからかもしれ
ません。
芸術療法、いわゆる「アートセラピー」という分野もあるほど、
絵画や音楽、ダンスなどの芸術表現は心の健康に良い影響を与えると言われています。
特に透明水彩は、その独特な特性によって、他の芸術ジャンルにはない癒しの力を秘めています。
淡く優しい色合いや透明感、滲みの偶然性が作り出すふんわりと
した曖昧さ――これらは、どこか私たちが子どもの頃に見た夢の風景や、雨上がりの空の清々しさを思い出させてくれます。
そして、透明水彩の素晴らしい点は、完璧な写実や緻密な技術に頼らなくても、その魅力が作品全体を優しく包み込んでくれるところです。
つまり、「上手じゃなくてもいい」という安心感があるのです。
実を言うと、僕は昔、油絵を描いていました。重厚な画材で描く油絵は確かに素晴らしいものですが、その分、
準備や後片付けも手間がかかり、思い通りにならないときのストレスはなかなかのものでした。
あるとき透明水彩に出会い、その軽やかさと自由さに心を奪われました。気がつけば、いつの間にかそのストレスは
どこかへ消え去り、描くことの楽しさが日常の中に自然に溶け込んでいました。
透明水彩の癒し効果を一言で表すと、それは「何でもない瞬間を特別にする力」ではないでしょうか。
ちょっとした滲みや思わぬ色の混ざり具合――そんな偶然がもたらす驚きと心地よさが、疲れた心にそっと寄り添って
くれるのです。だからこそ、忙しい日々の合間に少し手を動かしてみるだけでも、きっとその癒しを感じることができる
はずです。ぜひ、透明水彩を試してみてください。
筆を走らせるたびに、きっと新しい発見と、小さな幸せがあなたを待っているでしょう。
2025,12/9
透明水彩の色の濁りとは?
一般的には様々な色を混ぜすぎて彩度が落ちることを
「濁る」といいますが、果たしてそれだけを指して濁ると
表現するのでしょうか?
※詳細をnoteでご紹介しています。
紙の白を最大限に利用する
透明水彩を描くとき、紙の白を最大限に活かすことはまさに「透明水彩の極意」と言えるかもしれません。特に明るい部分は、最初から塗らないという選択が大切です。紙の白は、単なる余白ではなく、すでにそこに存在する光と空間そのもの、という考え方をすると作業がしやすくなると思います。
初心者の方は、どうしても「白いと寂しい…!」と思ってつい全部塗りたくなることがあるかもしれません。でも、そこはちょっと一呼吸してみてください。最初のうちは「これでいいのかな?」と不安になるかもしれませんが、大丈夫!紙の白が絵の中で大活躍してくれるのを、ちょっとした冒険気分で見守ってみましょう。
それに、透明水彩は実物より少し淡いぐらいがちょうどいいんです。
白い部分を残すことで、その淡さが自然と引き立ちます。
たとえ最後まで白いままの部分が残っていても、それが絵に光と空気を与えるので、心配する必要はありません。
紙の白を活かすことは、透明水彩を描く醍醐味のひとつです。その特別な魅力を、ぜひ楽しみながら体験してくださいね。
透明水彩は結局「空気を描く」ようなもの
透明水彩は、実物を一生懸命に描くというより むしろ「空気を描く」
感覚に近いのかもしれません。風景や静物の中に漂う、目には見えないけれど確かにそこにある“空気感”を表現するのが、透明水彩の真骨頂です。
その理由の一つは、透明な絵具の特性にあります。下地が透けて見えるおかげで、重ねた色の間に微妙な濃淡が生まれます。この透明感が、空気そのもののような柔らかさを絵に宿してくれるのです。
しかし、この透明感を生かすためには、ひとつだけ心得ておきたいポイントがあります。それは…「べったり塗らないこと」。これ、実は初心者がやりがちなミスなんです。勢いよく塗り重ねた挙句、「空気」ではなく「壁」を描いてしまうこともしばしば。
じゃあ、どうすれば空気を描けるのか?
答えはシンプルで、滲みやぼかしをうまく活用することです。
たとえば、青い空ならば、濃い青から淡い青に徐々に変わるグラデーションを。朝の柔らかな光の中の花ならば、周囲の空気がぼんやりと広がるような効果を狙いましょう。ここで重要なのは、実物の色や形に縛られすぎないこと。空がピンクでも、影が緑がかっていてもOK。むしろ、その自由さが透明水彩ならではの「リアリティ」を生み出します。
風景の切り取り方でテーマが変わる
「移動式カフェがある風景」
鎌倉にある文学館の庭に移動式カフェが止まっていました。新緑の緑の中の白い自動車がひときは目を引きます。
この風景を様々なアングルで撮影してみました。風景の切り取り方によって、雰囲気や狙いガラリと
変化するので、皆さんの参考になれば幸いです。
カメラを覗くと
こんな感じに見える
移動式カフェを撮ろうと思い、まずは気軽に1枚撮ってみました。結構色々な物が画面に入ってしまいます。
主役を程よい大きにすると
こんな感じ
そこでもう少し近づき、もう1枚。移動式カフェは程よい大きさになりました。しかしどこか主題がはっきりとしません。
周りの自然を意識した構図
周辺の樹木を画面に入れると、爽やかな
自然に囲まれた雰囲気になります。
奥行きや遠近感を意識した構図
縦に細長くすることで、道路の奥行きが強調され、まるでこの道を歩いているような臨場感が出てきます。
主役への強い凝視を意識した構図
上下も左右も切り落とすと、余分な要素は無くなり、車を主役にした感じが一層
強調されます。
人々の賑わいを意識した構図
車の横に何人かの人達が集まり、楽しそうな
雰囲気になります。
ちょっと息抜き 錯覚クイズコーナー
どちらが暗いですか?
皆さんはaとb、どちらが暗く見えますか?
※答えはこのページの最下部にあります
どちらの四角形が大きいですか?
前と後、どちらが大きく見えますか?
※答えはこのページの最下部にあります
左右どちらが傾いていますか?
右と左、どちらが傾いて見えますか?
※答えはこのページの最下部にあります
【今後掲載予定の記事】
・もっと水に任せてはいかが?
・さまざまな樹木の描き方
・水彩の下絵を描くことには 心を癒す効果がある
・光がどの方向から来ているか分かりますか?
・どのルートを辿っても目的地につけば良い
・写真の暗い陰影に要注意!
・遠くになるほど色は空の色に近づく
・実際の寸法と見え幅について
・描き進むと どんどん薄く見えてくるという話
上図の答えは全て「2つとも同じ」です。
お分かりになった方も多いと思いますが、実際の風景や静物でも、
このように人の目を惑わすものが沢山あります。
◆人は錯覚の世界で生きている
人は固定観念や思い込みよって物を見ていることが多々あります。
物が見えるとは、目から入った映像の情報が脳に行き そこで複雑な情報処理が
行われる、その結果一つの物として認識されることです。
つまり物を見ているのは目ではなく脳ということになります。
ある研究によると、「思い込み」は知能の高い人間だからこその
現象であり、人間が周りの環境に適応するための自然で健全な
脳のメカニズムということが解っているそうです。
しかし、錯覚することは紛れもない事実です。
そのことを自覚し 改めて行けば観察力は自ずと向上して行きます。